演奏技術セミナー 3-1 (バロックのポリフォニーと音色)

使用教材:
バッハ インベンション 6番
スカルラッティ K.9 & K.162

~ 強弱のみの音楽表現になっていませんか? ~
ピアノは「小さなオーケストラ」と称されるほど、同時に多くの音や声部を奏でられるだけでなく「多彩な音色」を出すことが出来る、それこそがピアノの神髄!
以下は、第3回目「音色」という講義の本丸に入ってゆく内容の要点

音楽には色々な要素があるが、日本において最も認識がずれているのは、「音色」の感覚
日本人は何でも作りこむのが上手いが、よく出来ているのに留学先で、「音色がない」と言われてしまうことが多いのは何故か?

 バッハ インベンション 6番

* 音楽とは「音」の組合せ  「音」は 
①音の始まり・発音の瞬間 ②音の伸び・響き ③消音の瞬間、消音による表情
以上の3つを聞くこと
日本人は①はよく聞いているが、ヨーロッパでは②、③をより聞いている
音色を作る=響きを聴いてコントロールすること

* 曲を弾くために必要なのは
①構成の理解 ②強弱・アーティキュレーションなど ③曲調に合った音色作り
以上の3つが相互に関わり合う

 ① 構成・曲の特徴
構成、調性、形式、記号、テーマ、対旋律(または第二テーマ)、反復進行(セクエンツ)、カデンツ、転調、解決、終止、終結部、リズム、複数のモチーフ、その場所と絡み合い等
以上を自分で探してみる

 ② 強弱など ダイナミクス=クレッシェンド バロック流はロマン派と異なる

1) 音型  上行では < 大きく、下行では > 小さくなる
その逆になる場合は、印象効果の大きさをもたらす

2) 声部の距離感 幅広=大きく豊かに 狭い=ぶつかるので注意
両者を加味して、フレーズや音型のはじまり、一音目の音量を吟味する

3) ゼクエンツ  和声感が大事 

4) ドミナント→トニカ 解決を誇張し過ぎると、和声感よりも拍感が目立つので注意
バランス、解決する事を重視

5) 山を持つ重要なフレーズがいくつか出てくるはずなので、その中でも一番高い、重要なもの=音量を出すものはどれか? また音量ではなく、表現の観点から一番重要なもの、緊張度の高いものはどれか?

 ③ 音色 (本題) 音色のイメージとは? 
・物理的なもの  高い低い 明るい暗い 太い細い 固い柔らかい 
・感覚的なもの  温かい冷たい 優しい 颯爽としている
・自然界にあるもの  風の通る音、鳥のさえずり、空、月、雷鳴
・感情  嬉しい 悲しい 怒り 切ない 楽しい 
・科学的なもの 匂い 
・光や時間 
・調性によるイメージや色彩  平和的、英雄的、青い、緑色がかった・・・など
 
* 音色の作り方 ・・・ 音色の要素とは

1)指の角度とイメージ (一般的な)
寝かせる=広い面積 太い、低い、暗い、やさしい、豊か、まろやか
立たせる=狭い面積 細い、高い、明るい、繊細、きらびやか

2)打鍵スピード
速い=クリア、縦方向を感じやすい
遅い=ぼんやり、横方向を感じやすい

3)重さ 音の質量に関わる
軽い→重い: 指の重さ、+手の甲・手首の重さ、+前腕、+上腕

3つの要素を混ぜ合わせて、音色を作るが、先ずイメージを持って、方法を探す
音量だけで音楽を作るのはダメ 音色の変化を利用すること
2声なら、異なる楽器をイメージする、そうすれば接近していても明確に区別可能



 スカルラッティ K.9 

コンパクトな割に多様な曲が揃っているので、スカルラッティは打鍵法、テクニックと音色のエチュードとして使用されている。そういえばルクセンブルク音楽院でも上級レベルの試験では、バロックの課題として平均律またはスカルラッティのソナタから1曲、と明記してあった。

*要求される要素 スカルラッティの「音」=軽やかな音がほしい 
 
 ・打鍵スピード
速い 指の入れ替えによる 指だけのレガート

 ・重さ 
手首の重さを利用するバッハやベートーヴェンとは異なり、最小限で

 ・脱力のタイミング
速い 発音と同時に脱力 一瞬で

 ・アーティキュレーション 
グループの最初の音(拍、響き)、そして最後から最初の音への繋がりが大事

 ・伴奏 = 重さのコントロール 
1オクターヴ内の分散和音では 最初の音(バス)で拍と響きを感じさせ、次へ繋げる
幅広い分散和音の時は、曲想に合わせた音色作りが大事、最後の着地まで音楽的に
(しっかり受けるのか、ふんわり受けるか・・・等)

 ・3度のスケール = 最も難しく最も美しい
近い音程でズレると目立つので、発音を揃える ← 日本人が得意

 ・発音 
1)打鍵タイミングを合わせ、バランスを整える
2)ソプラノ(上の音)が主導でバス(下の音)がそれを支える
3)リズムによる表情
4)和声感・音色の調和 ← ヨーロッパではココが重視される
短三度と長三度の違いを感じ取り、音で表現する事!
理想として、曲全体を通して、全ての縦のハーモニーをよく吟味する

 ・トリル
トリルとは、伸ばしたい音=伸ばしたい「理由」がある=表情づけ
音の膨らみ、伸び、、強調、終息  頭に合わせてアクセント付け

 ・32分音符
速い=上昇感、到達感を出すコツは、急激に音量を上げること

 ・サブドミナントからドミナントへ
緊張、次の音へ向かう欲求や必然性を表現すること


 スカルラッティ K.162

 ・アーティキュレーション
どんなアーティキュレーションかによって、表情が大きく変化する、拍感も変わる

 ・音の切り方
「どんな空間を残したいか?」指先の角度で 明るく、暗く・・・等

 ・テンポ
バロックの場合、組曲や連曲(平均律なども)において、テンポの関連性を無視しない 

 ・音型 イメージ
どの曲でもどんな音型でも、トップとバスだけ取り出して、内容を理解すること

 ・エコー
同じものを2度繰り返すときは、強→弱で変化させる
= 調性感、和声感はフレーズの冒頭から始める、途中で変化するのはロマン的

 ・右手で同音が続く場合
表情付けは 左手の和声の変化・進行に表情を合わせて、「音色」を変える

 ・少ない音符や少ない声部の曲のコツ
強弱ではなく、「音色」で変化をつけること

*以上の要素に加えて
 ・感情を乗せる
 ・右手を受け止める、左手の重要性
 ・ゼクエンツは、1つずつ、表情を変える

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